近年、企業の成長戦略において中途採用はますますその重要性を増しています。しかし、「どうすれば優秀な人材を確保できるのか?」「多くのサービスがある中で、どれが自社に合っているのか?」といった悩みを抱えている採用担当者の方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、中途採用を成功させるために不可欠な多種多様なサービスの種類と特徴を深掘りし、応募者を増やすための具体的な戦略、さらには最新のトレンドまで網羅的に解説します。この記事を読めば、貴社に最適な採用戦略を立て、理想の人材獲得へと繋がるヒントが見つかるはずです。
多様化する中途採用サービスの全体像

中途採用と一言で言っても、その手法やサービスは多岐にわたります。それぞれのサービスが持つメリット・デメリットを理解し、自社の採用ニーズに合わせて使い分けることが成功への第一歩です。
1. 企業と人材を直接繋ぐ「ダイレクトリクルーティング」
ダイレクトリクルーティングは、企業が自ら求める人材を検索し、直接アプローチする攻めの採用手法です。Wantedlyやビズリーチ、AMBIなどが代表的なサービスとして挙げられます。
この手法の最大のメリットは、まさに求める人物像にピンポイントでアプローチできる点にあります。これにより、質の高い母集団を形成しやすく、採用のミスマッチを減らす効果も期待できます。特に、一般的な求人サイトでは出会いにくい希少なスキルや経験を持つ人材、あるいは潜在的な転職希望者層にアプローチする際に強力なツールとなります。
一方で、デメリットとしては、スカウト対象者の選定や個別のメッセージ作成に相応の工数がかかる点が挙げられます。効果的なアプローチのためには、ターゲット人材のプロフィールを深く読み込み、個々に響くメッセージを作成する手間を惜しまない姿勢が求められます。
2. 採用のプロが仲介する「人材紹介サービス」
人材紹介サービスは、専門の人材紹介会社が企業のニーズをヒアリングし、それに合致する人材を紹介してくれるサービスです。ランスタッドやワークポートなどが有名で、特に即戦力となる人材や専門性の高いポジションの採用において威力を発揮します。
人材紹介のメリットは、何と言っても採用のプロが介在することでミスマッチが大幅に減ることです。事前のスクリーニングにより、企業の文化や求めるスキルレベルに合った人材が紹介されるため、採用後の定着率も高まる傾向にあります。また、採用に関わる手間を削減できる点も大きな魅力です。
ただし、その多くが成功報酬型であるため、採用が決定した際には高額なフィーが発生する可能性があります。これがデメリットとなり得るため、コストと成果のバランスを考慮した上で利用を検討する必要があります。
3. 幅広い層にリーチする「求人広告・転職サイト」
リクナビNEXTやマイナビ転職といった求人広告・転職サイトは、最も広く一般的に利用されている採用手法の一つです。求人情報を掲載することで、多くの応募者を集めることが可能です。
この手法のメリットは、その圧倒的なリーチ力にあります。より多くの求職者に自社の求人情報を届けることができるため、短期間で多くの応募者を集めたい場合に有効です。
しかし、応募者の質にばらつきが出やすいというデメリットも存在します。大量の応募の中から、自社に最適な人材を見つけ出すには、その後の選考プロセスに大きな工数がかかることを覚悟する必要があります。
4. 採用業務を丸ごと委託「採用代行(RPO)」
採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)は、採用業務の企画から実行、効果測定までを外部の専門企業に委託するサービスです。ネオキャリアやキャリアマートなどが提供しています。
RPOの最大のメリットは、採用担当者の業務負荷を大幅に軽減できる点です。採用に専門知識とリソースを割けない企業や、急な採用ニーズに対応したい場合に非常に有効です。採用戦略の立案から応募者のスクリーニング、面接日程調整、合否連絡まで、一連の業務を任せることで、社内リソースをコア業務に集中させることが可能になります。
一方で、デメリットとしては、外部委託であるがゆえに自社のカルチャーや細かな要望が伝わりにくくなる可能性がある点です。サービスの選定時には、依頼する範囲や連携体制、担当者の理解度などをしっかり確認することが重要です。
5. コストを抑え、質の高い人材を獲得「リファラル採用・SNS活用」
リファラル採用は、社員からの紹介を通じて人材を獲得する手法です。また、X(旧Twitter)やFacebook、LinkedInなどのSNSを活用して採用活動を行うSNS採用も近年注目を集めています。
これらの手法の共通のメリットは、採用コストを抑えられることに加え、自社の文化や仕事内容を深く理解した社員が紹介するため、ミスマッチが少なく、定着率の高い人材を獲得しやすい点です。SNS活用においては、企業のブランディングや魅力発信を通じて、潜在的な転職希望者層にもアプローチできる可能性があります。
中途採用サービスを利用するメリット

多様な中途採用サービスが存在する中で、これらのサービスを賢く活用することで、企業は様々なメリットを享受できます。
採用工数と負担の大幅削減
採用活動は、求人情報の作成から応募者対応、面接、内定者フォローに至るまで、多岐にわたる業務が発生します。これらの業務は、特に専門の採用担当者がいない企業にとっては大きな負担となります。外部サービスを活用することで、これらの工数を削減し、本来の業務に集中できる時間を確保できます。
雇用のミスマッチを最小限に
「採用したはいいものの、すぐに辞めてしまった」「期待していたスキルと違った」といった採用のミスマッチは、企業にとって大きな損失です。人材紹介やダイレクトリクルーティングなど、専門家によるスクリーニングや企業からの直接アプローチにより、候補者のスキルや経験、人柄が自社の求める人物像と合致するかを事前に確認しやすくなります。
応募者数の増加と多様な人材プールの形成
求人広告や転職サイト、SNSを活用することで、自社の魅力をより多くの求職者に発信し、応募者数を増やすことが可能です。また、これまでアプローチできなかった層や、潜在的な転職希望者にもリーチできるようになり、多様な人材プールを形成することができます。
採用戦略の明確化と専門知識の活用
外部の専門家やコンサルタントと連携することで、自社の採用課題や求める人材像を客観的に見つめ直し、より明確化することができます。採用市場の動向や他社の成功事例など、専門的な知見を得られることも大きなメリットです。これにより、より効果的な採用戦略を策定し、実行に移すことが可能になります。
サービス選定の重要ポイント
数多くある中途採用サービスの中から、自社に最適なものを選ぶためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
自社の採用ニーズと業種への適合性
最も重要なのは、自社の採用ニーズを明確にすることです。「即戦力が欲しいのか」「若手を採用して長期的に育成したいのか」「特定の専門スキルを持った人材が必要なのか」など、具体的な採用目標によって選ぶべきサービスは変わってきます。また、IT、製造業、サービス業など、自社の属する業界に特化したサービスを選ぶことで、より質の高いマッチングが期待できます。
コスト構造の比較と予算への適合性
各サービスの料金体系は、成功報酬型、月額費用型、掲載料型など様々です。予算に合わせたコスト構造のサービスを選ぶことはもちろん、採用単価や投資対効果を長期的な視点で見極めることが重要です。安さだけで選ぶのではなく、得られる成果とのバランスを考慮しましょう。
サポート体制と実績の確認
サービス提供会社のサポート体制が充実しているかどうかも重要なポイントです。導入後のフォローアップ、トラブル発生時の対応、効果測定に関するアドバイスなど、手厚いサポートがあることで、安心して採用活動を進めることができます。また、過去の採用実績や同業他社の成功事例なども参考に、信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。
代表的な中途採用サービスと活用事例
前述のポイントを踏まえ、具体的なサービスをいくつかご紹介します。
サービス名 | 特徴 | 料金目安 |
---|---|---|
Wantedly | ダイレクトリクルーティングに強く、共感を軸とした採用が可能。 | 月額約10万円~ |
ビズリーチ | ハイクラス人材向けのダイレクトリクルーティング。 | 成功報酬型 |
キャリアマート | 採用代行・アウトソーシングで業務負担軽減。 | 月額2~70万円程度 |
ランスタッド | 幅広い業種に対応する人材紹介サービス。 | 成功報酬型 |
リクナビNEXT | 業界最大級の転職サイトで幅広い層にアプローチ。 | 掲載料型 |
これらのサービスはそれぞれ異なる強みを持っています。例えば、スタートアップ企業で企業のビジョンに共感する人材を求めている場合はWantedlyが、高い専門性を持つエンジニアや管理職を探している場合はビズリーチやランスタッドが適しているでしょう。採用業務の負荷が高く、リソース不足に悩んでいる企業であればキャリアマートのような採用代行サービスが強力な味方になります。
複数のサービスを比較検討し、自社の採用戦略に最もフィットするものを選ぶことが、中途採用成功への近道です。
中途採用の応募者を増やす具体的な戦略

サービスを活用するだけでなく、自社の取り組みによって応募者数を増やすための戦略も非常に重要です。
1. 採用サイトや情報発信の強化
企業ホームページとは別に、求職者向けの採用サイトを設けることは、応募意欲を高める上で非常に効果的です。社員の声、一日の仕事の流れ、働く環境、福利厚生など、求職者が知りたい情報を具体的に、かつ魅力的に発信しましょう。写真や動画を多用し、企業の雰囲気が伝わるようなコンテンツを充実させることも大切です。採用サイトの情報は常に最新に保ち、ターゲット層に響くようなメッセージを発信し続けることが重要です。
2. クチコミサイトやSNSの積極的な活用
企業の評判や実際の職場環境を知るために、多くの求職者が企業クチコミサイトを参考にしています。社員がポジティブな情報を投稿したり、企業が公式に情報発信を行うことで、応募者の安心感や信頼感を向上させることができます。
また、X(旧Twitter)、Facebook、LinkedIn、InstagramといったSNSや、自社ブログなどのオウンドメディアを活用した採用広報も非常に有効です。仕事内容や職場の雰囲気、社員同士の交流などを具体的に発信することで、企業の知名度や魅力を高め、潜在的な応募者層にもアプローチできます。特に若年層へのアプローチにはSNSが欠かせません。
3. 求人内容と待遇の見直し
応募を増やすためには、求人票の質も重要です。**仕事内容や条件を詳しく具体的に記載し、応募者が知りたい情報を網羅しましょう。**漠然とした表現ではなく、具体的な業務内容、使用ツール、達成目標などを提示することで、入社後のギャップを減らし、応募者の期待値を高めることができます。
さらに、労働条件や福利厚生、ワークライフバランスの充実を図ることも、優秀な人材を引きつける上で不可欠です。リモートワーク制度、フレックスタイム制度、副業の容認、育児・介護支援、教育研修制度など、多様な働き方やキャリア形成を支援する制度を積極的にアピールしましょう。求職者が「ここで働きたい」と思えるような魅力的な待遇を提示することが、応募意欲の高い人材獲得に繋がります。
4. 採用手法・チャネルの最適化
いくら魅力的な求人を出しても、それがターゲット層に届かなければ意味がありません。求める人材が普段どのような求人媒体や転職サイトを利用しているかをリサーチし、適切なチャネルを選定することが重要です。業界特化型の媒体や、ダイレクトリクルーティング、社員紹介制度(リファラル)なども積極的に活用し、多角的なアプローチを試みましょう。
5. ターゲット・採用基準の明確化
「どんな人材が欲しいのか」を明確にすることは、採用活動の成否を大きく左右します。必要なスキルや経験、そして自社のカルチャーに合う人物像を具体的に定義し、それに合わせた情報発信やアプローチを行うことで、より効果的に応募者を集めることができます。採用基準が曖昧だと、ミスマッチが生じやすくなるだけでなく、採用活動そのものも非効率になってしまいます。
6. 採用広報・マーケティング戦略の導入
採用活動においても、マーケティングの視点を取り入れることが重要です。ターゲット層への認知度向上、自社の魅力訴求、応募への誘導といった一連の流れを戦略的に設計することで、応募者増加につながります。採用ブランディングを意識し、企業としての魅力を多角的に発信していくことが求められます。
これらの対策を組み合わせることで、中途採用の応募者数を効果的に増やすことが可能です。特に、情報発信の質と量、ターゲットに合わせたチャネル選定、そして自社の魅力の明確化が重要なポイントとなります。
中途採用手法のトレンド
中途採用市場は常に変化しており、最新のトレンドを把握しておくことは、効果的な採用戦略を立てる上で不可欠です。2025年において、特に注目すべきトレンドをいくつかご紹介します。
1. ダイレクトリクルーティングのさらなる拡大
企業が自らターゲット人材に直接アプローチするダイレクトリクルーティングは、今後もその重要性を増していくでしょう。特に即戦力や専門性の高い人材獲得を狙う企業では、従来の待ちの採用から攻めの採用へとシフトが進んでいます。
2. SNS・オウンドメディア活用の深化
X(旧Twitter)、LinkedIn、InstagramなどのSNSを使った採用広報や、企業ブログ、採用動画などオウンドメディアを活用した情報発信は、ますます多様化・高度化しています。企業の雰囲気や働く魅力をよりダイレクトに伝えることで、応募者との接点を増やし、エンゲージメントを高める狙いがあります。
3. リファラル採用(社員紹介)の普及と制度化
社員からの紹介によるリファラル採用は、コスト効率の良さとミスマッチの少なさから、多くの企業で導入が進んでいます。今後は、報奨金制度の充実や社員への採用活動に対するインセンティブ設計など、より制度化された形で普及していくと予想されます。
4. 採用ミートアップ・カジュアル面談の定着
会社説明会よりもライトな「ミートアップ」やカジュアル面談を通じて、応募前の候補者と接点を持つ企業が増えています。これは、候補者が気軽に企業情報を得られる機会を提供し、企業側もより早い段階で候補者の潜在的な興味や適性を把握できるため、双方にとってメリットがあります。
5. 柔軟な働き方・制度改革の訴求の強化
フルリモートやフレックスタイム、副業容認など、柔軟な働き方を打ち出すことは、優秀な人材の応募・定着を促進する上で不可欠な要素となっています。特に若手層や多様なライフスタイルを持つ人材は、「自分らしく働けるか」を重視する傾向が強く、企業はこれらの制度を積極的にアピールする必要があります。
6. 採用プロセスのデジタル化・効率化の加速
オンライン面接やATS(採用管理ツール)の導入など、採用活動のデジタル化・効率化は今後も加速していくでしょう。これにより、応募者の利便性が向上し、採用スピードがアップするだけでなく、データに基づいた採用戦略の立案も可能になります。
7. ヘッドハンティングの戦略的活用
特に中途採用者向けに、ヘッドハンティングを重視した戦略を取る企業も増加しています。専門性やマネジメント経験を持つ層へのダイレクトなアプローチは、特定のポジションを迅速に埋める必要がある場合に非常に有効です。
まとめ
中途採用は、企業の成長を左右する重要な経営戦略の一つです。今回ご紹介したように、中途採用サービスには多様な種類があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットが存在します。自社の採用ニーズを明確にし、これらのサービスを賢く活用することで、採用工数の削減、ミスマッチの軽減、応募者数の増加、そして採用戦略の明確化といった多くのメリットを享受できます。
さらに、採用サイトの強化、SNS活用、クチコミ戦略、求人内容の見直しといった応募者増加のための具体的な戦略を組み合わせ、最新の採用トレンドを取り入れることで、中途採用の成功確率は格段に高まります。
最適なサービスと戦略の組み合わせによって、貴社が求める優秀な人材を獲得し、さらなる企業成長に繋がることを願っています。
コメント